あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
石で造られた不揃いで不恰好な階段を一足飛びで駆け降りた。一番近くにいたから一番に行動に移せた。もう、意味なんてないのに。


「あ゙あ、ぁ、痛…ぅ゙、死にた…く、ない…死にたく、ない…よ…」


左目から透明な雫をひとつ。


「……ちーちゃ、」


最期に、俺の名前を呼んで。其れきり彼女はぴくりとも動かなくなった。一人、二人、三人四人と、焦ったように慌ただしく降りてくる人の気配が真夏のはずの空気を冷たい風へと変えて運んでくる。

終わった。何もかも。全部、全部、終わった。


「ああ、死んだのか」
「……千秋?」


自分でも驚くほどに冷静な声で。恐ろしいほどに冴えた思考で。四人の顔を見る。絶望、恐怖、後悔、呆然、それぞれに染まる色。

それも、すべて、吞み込んで。すべて、一緒に掻き雑ぜて。


「俺達だけの秘密だからな」
 
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