あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─


熱い、皮膚がひりつく。

手放していた意識が戻った時、目を開いて一番に飛び込んできたものはたった一種類の色。四方を同じ色で塗った箱のなかに閉じ込められているように、ただ一色、蒼しか見えない。


「っ、な」


焦燥(しょうそう)で叫びだす前に、自分の身体への違和感に気が付いた。指一本満足に動かせない。それどころか無理に動こうとすると顔になにかが落ちてくる。この匂いは、土?


「起きたか、千秋」
「……聖」


水面から覗きこまれているような奇妙な感覚に、じわりと汗が滲んだ。そんな俺を見て聖はふと視線をずらす。そうして、その先から現れるのは白。蒼に落とされた、白点。


「改めて紹介するよ」
「…まっ、ひじ、」
「この子はお前の子だ、千秋。お前と、美菜の子だ」
「!!」


そうかな、と思ってはいたけれど。それでも俄かには信じ難い。だって、一体どうして。どうなったら、そんな、嘘みたいな奇蹟。

俺の機能不全で役立たずな脳に浮かぶ疑問はお見通しとでもいうように、聖は機械的な声音(こわね)で淡々と容赦なく言葉を続けていく。
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