あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
 
「早紀、行こう」


目の前には、手を差し伸べてくれる大好きな人がいる。これからも共に過ごしていきたい大切な友がいる。なんて幸せ、こんな幸せ。


「待って、みんな!」


土と砂利の混ざった道を走った。ただ、前だけを見て。


「早紀ー、こけんなよー!」
「転ぶ前にちーちゃんが支えるでしょう?」
「あー!もうマジで婚活しよ!……寧ろ、ワンチャンこの同窓会に賭けるのもあり?誰か良いの残ってたっけ?奥村とか独身?」
「……綾、程ほどにな?あと奥村は既婚者」
「んもお゙~!」
「あははははは!」


盛夏の強く白い陽射しが肌に落ちてくる。あたたかな光の束が背中を押してくれる。だから、走れる。まだまだ、もっと、もっと。


(好き、大好き。みんな、ありがとう)


そっと呟いた告白を胸に、一番うしろで泣いたことは誰にも秘密。千秋にも、内緒。これは私の、景山早紀( わたし )だけの、――秘密の夏。
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