あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
声が、呼吸が、重なり合う。


「っ、……ああ、ほんと、本当に、久しぶりだなあ千秋。…つうか、もう……マジでなんつったらいいのか…」


困っている時、悩んでいる時、ジョリジョリと形の良い頭全体を掻き回す癖も変わっていない。それを見て思うのは安堵と苦悶。

色々と話がしたい。出来ることなら早紀も交えて。けれど、


「なあ、綾のこと詳しく聞いたか?……俺さ、もう、怖くて怖くてしょうがねえよ。次は俺かもしんねえ。俺の、俺達の、」
「幸次!」
「テレビでは伏せてあったけどよ、綾、……両腕が無かったって。そんで、その切断された肉と骨の間に〝次は脚を貰いに行く〟って紙が…」


「《――!――!―――!!》」


その時、なかの空気が激しく揺れ動いた。

叫びにも似た、狂ったような甲高い泣き声が外にいる俺達の耳にもしっかりと届き、堪らず息を飲む。呼吸を止めて数秒。どちらともなく目配せをしてその重く気の進まない足に力を籠めた。


(クソ、なんだっていうんだ)


靴を揃えることも忘れ、無言で長く暗い廊下の上をただ滑る。
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