あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─


絶えることなく線香を燻らせる厳かな場で、それは正に惨状。


「っ゙、あ゙あああやぁぁぁ……綾ぁぁぁ゙!ヴぇっ……え゙ぇぇっ……あやぁぁぁ!なん、で……なんでえぇぇぇ!!」


髪を振り乱して錯乱している人物は、年の離れた綾のお姉さん。

ずっと海外で暮らしていて、国内へ戻って来ることは数年に一度ほどだったそうだけれど。姉妹の間では頻繁に手紙を送り合い、メールやSNSを通じてはほぼ毎日やり取りを交わしていたと。

仲が良い姉妹だったのだと、綾自身が言っていたのを覚えている。

シスコン気味だった綾から見せて貰った写真の人物は、実に聡明そうで美しい大人の女性だった。人はこんなにも変わるものなのか。

いや、俺が、俺達が異常なだけなのかもしれない。


(かや)、よしなさい。お前がそんな事だと綾が静かに眠れないだろう?」
「ヒギッ……ゔぇぇ、ぁっ、あああ、綾ぁぁ……あやぁぁ……お、お父さ、顔が……かお、顔が、見たい……顔見せてよぉ……」
「………見ない方がいい」


見ない方がいい。

その言葉に瞬きすらもできなくなってしまったのは誰だったのか。
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