あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─


「――あき、千秋!」


寝汗でべた付く肌が、朝でも蒸せる真夏の気温を思い出させてくれる。目の前に広がる光景は、今度は見知らぬ天井ではなく見知った顔の幸次だった。


「聖なら朝飯作ってくれてるぜ?お前、夜中に魘されてたンだってな」


苦笑いを浮かべながら、ペットボトルを手渡してくれる幸次がキラキラと眩しい。朝日と重なってだとか、そんなうすら寒い比喩を言うつもりではなくて。単純に〝お前〟と呼んでくれたことが嬉しかった。幸次は本当に変わらない。昔のままでほっとする。

なにを弱気になってたんだよ、俺。


「……サンキュ」
「おう!」


夜の蛙と交代し、鳴くのは蝉の声。

それと共に網戸からは湿った土、草、花の香り。田舎特有の、朝。
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