あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─


『ちーちゃん』


無邪気な笑顔で名前を呼ばれることが苦しくなって。仄かに抱いていた彼女への恋心は、異常で異質なものへと醜くその姿(かたち)を変えた。


『跪いて舐めろよ』


性的欲求をぶつけ、暴力で支配し、従わせて造り上げた、従順な操り人形。美しくて儚い、心を失ったニセモノの人形。

知っていたんだ。

美菜が誰に好意を持っていたのかを。だからこそ余計に壊したくなったのだと思う。自分に向くことのない甘やかな眼差しを、無理矢理に捻じ曲げてでもこちら側へ向かせてやろうと。


『美菜が好きなのは?』
『……ちーちゃん』
『本当に?』
『うん、…ぅん、』


繰り返せば繰り返すほど虚しくなるだけなのに。それでも美菜を手放せなかった。意固地になっていた。彼女を地獄に道連れにした。
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