あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
 
「もしもし?」


なにか予感がした。出なければならない大切な電話なのだと。


『千秋だよな?』
「っ、」
『突然で悪い。実家に電話したらこの番号を教えられたから』


耳から入った優しい低音は、脳を直接揺さぶる。この声の主は。


「……お前、聖か?」
『ああ、そういえば名乗ってなかったな。そうだよ、聖だよ』


ぐうと喉の奥が鳴る。叫びだしたくなる衝動。涙さえ浮かんでしまいそうな脆弱(ぜいじゃく)ぶりは、過去の自分に引き摺られたのか、或いは。


『綾のこと知ってるか?』
「……さっき、見た」


ああ、馬鹿だな。冷静に考えればわかることなのに。聖からの電話を懐かしんでいる場合ではなかった。このタイミングで俺達が連絡を取り合う意味なんて、一つしかないじゃないか。
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