あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─


今日はまた一段と蝉の大合唱が煩い。

歩いても、歩いても、付き纏う耳障りな鳴き声と真夏の強過ぎる日差し。それは追い打ちをかけるように永続的に目的地まで続いた。


「ここ、変わったなあ」


誰に向けるでもなく、目の前に広がる治水工事が施された河川を見て溜息を吐く幸次の隣に腰を下ろす。


「ホントにな」
「昔はただの川だったのに」
「……ん」
「なんか、切ねえよ」


まるで遠い昔に想いを馳せているような。そんな表情を浮かべる幸次にちくんと胸が痛んだ。だって、俺にも見えたから。

幸次が見ているであろう景色が。あの頃の俺達が。


「幸次、千秋」
「お、そうだな。早速やっか!」
 
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