あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
気合いを入れるようにパンと両頬を叩いて幸次は背筋を伸ばす。聖は綺麗に包装された花束を抱えたまま、俺に線香を手渡した。

形容(かたち)とすれば灯篭流しが近いのかもしれない。

勿論、そんなちゃんとしたものではないし時期だってずれている。それでも気持ちは、想いは、今の俺達のありったけ。

ありったけの懺悔。


「っ、」


緩やかに流れる水面に花束を流す。この川は美菜が眠る森を取り囲むようにして流れている。だからこそ此処へ来た。どこからでも見てくれと。届いて欲しいと。三人で手を合わせ、目蓋を閉じる。

今さら赦されるだなんて思っていない。既に犠牲者も出ている。

傍から見れば滑稽だろう。〝ふり〟に見えるのかもしれない。でも、俺は、特に俺は。心から謝らなければならないと思った。


(ごめん、ごめん、美菜)


俺なんかがお前の命をどうこうして良い権利なんてなかったのに。


(ごめん、本当に、ごめん、俺は……)


『《ばかじゃないの?》』
 
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