あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
「俺達、素直じゃねえよな」
本当にその通りだ。どうして素直になれなかったのかとか。どうして屈折した感情を抑えられなかったのかとか。〝どうして〟なんて言いだしたらキリがないけれど。それでも思わずにはいられない。
好きという気持ちは、特別だった筈なのに。
「幸次だけじゃない。俺だって二人のことが羨ましかったよ」
よいしょと立ち上がったその足で俺達の前にしゃがみ込む聖。重なり合う三人の影が、真っ直ぐ校舎に向かって伸びて行く。
「千秋はさ、覚えてないかもしれないけど。……俺が、両親のことで嫌な噂話を広められていた時、怒ってくれただろ?『お前らは親が居てもその程度にしか育てないクソ野郎どもだな、聖の方がよっぽど大人で賢い良い奴だ』って」
ふと、色素の薄い前髪の隙間から見えた聖の優しい瞳。
「あれ、すごく救われた。幸次は幸次でなにも変わらない態度で接してくれて嬉しかった。普通でいてくれることが嬉しかった。幸次の皆から好かれるその人柄、羨ましかったよ」
「……聖」
陽が沈む、闇が来る。
重なり合った影が、溶けてなくなるその前に。