あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
≪2≫ 禁忌の森


ひぐらしの鳴き声が聴こえる。

高く澄んだ青に、何処までも広がる緑。錆びたバス停の看板の隣には、ぽつんと置き去りにされた朽ちかけの木製のベンチ。ノスタルジアに浸るつもりはない。それでも素直に寂しいなとは思う。


「何年ぶりだろう」


少女が吐くようなか細い独り言は、田舎特有の美しい空気に溶けて消えた。地に足がつかない心地のまま、うろうろと視線を彷徨わせることしか出来ない俺のかわりに、聖は耐久性の怪しいベンチへと男らしく腰を下ろす。下ろして、息をのんだ。


「ち、あき、アレ」


聖の声と共にふわりと浮いた指先。その先を追い掛けて、止まる。
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