あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
それでも一応の筋は通っているように思えた。

後は自分達で実際に体験をする日がくれば納得できるのだろうか。不信感を払拭できるのだろうか。そうであればいいのだけれど。


「ちょっと微妙だったな」


立志式の帰り道、自転車を漕ぎながら交される会話は弾まない。


「あー、確かに。微妙だな」
「マジで!なんっか消化不良だよなー!」
「まあな」
「俺らは見ちゃってるわけだしさ」
「うん」


車輪の駆動音が虚しく響く、男ばかりの空間。ハンドルに適当に引っ掛けていたスクールバッグはでこぼこの砂利道に揺さぶられて、ぴょこんぴょこんと四方に勢いよく跳ねた。


「うし!暗くなっててもしょーがねえべや!女子組は市内に買い物行くンだろ?俺らもどっか行かね?つっても釣りぐらいかー」
「良いんじゃない、釣り」
「あー、だな」
「じゃあ決まりな!いつものとこ集合で!」


手を上げて別れるそれぞれの帰路。

春の麗らかな陽気は、幸先の良い一年のはじまりを告げているようだった。俺が、俺達が、笑いあえていた最後の春。

そして全てが崩壊する、夏が迫る。
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