終わりかけの永遠に
「...俺、さ。ずっと苦しいままなんだって思ってた」


突然、真面目な声で、千歳くんがそう言った。


「えっ...?」

「...永遠に苦しいままで、本当の自分を消して、明と向き合うことを避けて...ずっと...ずっと、辛いまま生きていくんだって」

「...辛いまま...ずっと...?」

「うん。でも、今はなんか、すごく楽。封じ込めていた明との思い出の鍵を開けて、本当の自分で生活して、夢だったステージに立って...なんか、明と一緒にいるって、気がする」

「...永遠にもさ、きっと終わりがあるんだよ」

「終わり...?」

「...うん。永遠に辛いまま生きることも、永遠に幸せなまま生きることも、私は出来ない気がするんだよね。永遠なんて、現実味が無いし。それに、幸せがずっと続けば、それが当たり前になって、幸せじゃなくなる。苦しみも、それがずっと続けば、それに慣れちゃって、何が苦しいのか分からなくなる。元々、永遠なんて物が無いのかもしれない。それほどあやふやな物なんだよ」

「...そうだね。でも、俺は永遠があるって、信じたいよ。この時間が...いや、莉愛と、一緒にいられる時間が、永遠に続けばなって...ずっと思ってたから」


千歳くんはそう言って、私の方を向く。
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