終わりかけの永遠に
「それよりさ、りー、その男の子は彼氏か?」

「えっ?あ、違うよ。クラスメートの騎田千歳くん」

「千歳くんかー。じゃあ、ちーちゃんって呼ぼうかな!」

「えっ...?」


騎田くんが驚いた様子で陵くんを見る。


「あれ?気に入らない?」

「いや、別にいいっすけど」


陵くんはほわほわしてて、騎田くんのペースをいい意味で乱していっている気がする。
堅かった騎田くんも、和んでいる様子だったし。


「どう?」

「どうって何が」

「ここが!」


二人とも別れて、私たちは共有スペースでジュースを飲んでいた。


「別にいいんじゃね?」


コーラを飲みながら、騎田くんはそう言う。


「私ね、騎田くんには才能があると思うの!」

「またその話かよ」

「ぜーったい人気になるはず、私が保証する!」


コーラを一口飲み、騎田くんは私を見た。


「なんで俺なんかにこだわるんだよ」

「それは、私が好きだからだよ。騎田くんの歌声が」

「は?あんたが好きな声のヤツ、他にもいるだろ?」

「いるよ。でも、他の人の歌声より、騎田くんの歌声が好きなの。本当に歌が好きなんだなぁって、感じるの」


伝わらないかもしれない。
でも、騎田くんはきっと歌が大好きなんだって、分かるから。


「俺じゃダメなんだよ」

「え...?」

「俺だけじゃ、叶えたことになんねーの」


その言葉を放ったときの騎田くんの表情は、悲しそうにも見えた。

私は、この表情を見たことがある。
騎田くんと、初めて会った屋上。
彼が、『Lily』を歌っていたときと、同じような表情だった。
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