終わりかけの永遠に
「わぁ~!やっぱ様になってる!」


ギターをもってマイクの前に立つ騎田くんはカッコいい。


「ここ、防音じゃねぇよな」

「まぁ、人通り少ないし大丈夫だって」


騎田くんは少し嫌そうだけど、私は気にせず進める。


「なんの曲がいいかなぁ?」

「『brave alone』はどうですか?」


春川先生がそう言った。


「『brave alone』か...いいかもな」


騎田くんも賛成する。

『brave alone』って、確かヒーローに憧れた少年の歌じゃなかったかな。
好きな人を守ろうと、一人の少年がヒーローになろうと必死に一人で戦う姿が描かれた曲。


「お前、ベース弾けるか?」

「えっ...?あ、うん。少しなら」

「先生は?」

「一応全て出来ます」

「有能なヤツばっかなんだな」


騎田くんはフッと笑い、春川先生にドラムを頼んだ。
何年も前からある楽器たちは、音が少しおかしい。
でも、騎田くんの歌声のおかげで、それを聞くのは苦痛じゃない。

力強いギターの音色、力強い歌声、心地よく響くドラムに、私はベースの音色を混ぜていく。

ついていくのは少し大変だけど、今、すごく楽しい。
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