終わりかけの永遠に
それから少しして、「ごめん」と騎田くんは私から離れた。


「大丈夫だよ。私も、本当の騎田くんに会えて嬉しい」


そう言うと、騎田くんはふわっと笑った。

本当は、こんな風に笑うんだ。
強がって、無理してた騎田くんより、ずっといい。


「あの...さ...」

「何?」

「俺...どうにかしたいんだ」

「どうにかって...何を?」

「...クラスを。もう...いじめで誰かが苦しむの、嫌なんだよ。誰も助けてくれないって考えを、変えてやれないかな...?」


騎田くんは、いじめを無くそうとしている。
それは、明くんが好きだった騎田くんより、もっと好きになれる騎田くんになろうとしている気がした。

自分を殺してほしくはないけど、自分を正しい方向に導こうとしているのは、私にとっても嬉しいことだった。


「うん。きっと出来る。今の騎田くんなら」


私がそう言うと、騎田は安心したように笑って、屋上のドアを開けた。

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