ネトに続く現の旅
つくね男に雑炊を出したあと、「あがりまーす」と厨房に声をかけた。裏に戻って手を洗い、前掛けをはずして自分の服に着替えた。
「お疲れ様でしたー」
店内に戻り、厨房と女性客のグループに頭を下げてからカウンターに目をやると、もうそこにつくね男の姿は無かった。
さっと着替えたのだから、そんなに時間が経ってしまったわけでもないだろうに、もう食べ終わって帰ってしまったのだろうか。
私は店の入り口の戸をがらっと開けた。それでも男の姿は見当たらなかった。
店長のおせっかいを真に受けたわけではないけれど、私はなんだか拍子抜けをした思いで、店の前に止めた自転車に鍵を差し込んだ。
自転車を軽く浮かせて乗り出そうとしたその時、
「おーい」
と、遠くから呼ばれた。
その声のする方に顔を向けると、数十メートル離れた自動販売機の前で両手を振るつくね男の姿があった。つくね男はその場に屈んで自販機からジュースを取り出すと、こちらに向かって勢いよく走ってきた。
腕はいっぱいに振られ、腿を高く上げるあまりの猛ダッシュに、私はびくっとした。
「せっかくだから送っていきますよ…と思ったけれど、君は自転車なんだね。」
数秒後、自転車にまたがろうとした私の横でぴたっと止まって、息を切らしながらつくね男はそう言って笑った。
私は宙に浮いた片足をもとに戻すと、男につられて思わずにこっと笑った。
「お疲れ様でしたー」
店内に戻り、厨房と女性客のグループに頭を下げてからカウンターに目をやると、もうそこにつくね男の姿は無かった。
さっと着替えたのだから、そんなに時間が経ってしまったわけでもないだろうに、もう食べ終わって帰ってしまったのだろうか。
私は店の入り口の戸をがらっと開けた。それでも男の姿は見当たらなかった。
店長のおせっかいを真に受けたわけではないけれど、私はなんだか拍子抜けをした思いで、店の前に止めた自転車に鍵を差し込んだ。
自転車を軽く浮かせて乗り出そうとしたその時、
「おーい」
と、遠くから呼ばれた。
その声のする方に顔を向けると、数十メートル離れた自動販売機の前で両手を振るつくね男の姿があった。つくね男はその場に屈んで自販機からジュースを取り出すと、こちらに向かって勢いよく走ってきた。
腕はいっぱいに振られ、腿を高く上げるあまりの猛ダッシュに、私はびくっとした。
「せっかくだから送っていきますよ…と思ったけれど、君は自転車なんだね。」
数秒後、自転車にまたがろうとした私の横でぴたっと止まって、息を切らしながらつくね男はそう言って笑った。
私は宙に浮いた片足をもとに戻すと、男につられて思わずにこっと笑った。