ネトに続く現の旅

「今は雑誌社と提携してるから、言われればどんな所にでも行ってどんな写真でも撮ってくるけど、本当の希望は戦場なんだ。」

となり街にある現のアパートに、初めて遊びに行った時のことだ。

「どうして現はジャーナリストになろうと思ったの?」と私が聞くと、「そこ聞いちゃう?長くなるよ」と、いたずらな笑みを見せた。


「別に争い事が好きだとか、血を見たかったからとかそういうんじゃないよ。旅行が好きでさ。二十歳くらいの時から、大学の休みを利用しては、いろんな国に行ってたんだ。あの頃は、死に物狂いでいろんなバイトを掛け持ちしてたんだけど、全部旅する資金に消えてたな。初めは、ヨーロッパやアメリカとかの観光名所を回ってたんだけど、なんだかどこに行っても景色がぼんやりとしていてね。とにかく色が薄いんだ。
これなら日本に帰っても、パンフレットやテレビを見ていれば満足できちゃうなぁと思って止めた。もっと濃い知識や感性を自分の中に取り入れたかった。
インドやタイにも行ったよ。アガスティアの葉にずっと興味があって。知ってる?」

「あの世界中のひとりひとりの運命が記されているっていうやつ?」
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