ネトに続く現の旅
「そうそう。初めに親指の指紋を取って、百八種類の指紋の中から、自分と同じものを探すんだ。そこまでは良かったんだけど、アガスティアの葉っていうのは、タミール語っていう特殊な文字で書かれているんだよ。でもこれが、地元の人でもなかなかその言葉を読み取ることができないんだ。そこで、それを解読できるナディア・リーダーとかいう特別な人達がいるんだけど、これがまた次から次へとわんさか出てきて、みんなそれぞれお金を取ろうとするんだ。やれこっちの方が安いだの、俺の方が詳しいところまで教えてやるだのとうるさくてさ。みんな胡散臭く思えて、結局やめたよ。前世の過ちとか、自分の寿命とか知りたかったなぁ。」
現は頭の後ろで両手を組むと、残念そうにそう言った。
「私は自分の寿命は知りたくないなぁ、怖いもの。」
「そう?心構えができるじゃない。やっておきたいことなんかも、それまでに出来るしさ。怖いのは最後の一日だけだ。」
なるほどと納得はしたものの、やっぱり私は次の日に楽しみなことがあったとしても、明日自分が死ぬなんていうことを考えもせずに、目の前の幸せを夢見て、いつもと変わらない眠りにつく方がずっと安らかだと思った。
そう言おうかとも思ったけれど、現の話に水を注してしまうようだったのでやめておいた。