ネトに続く現の旅
現は、手の甲を上にして、自分の腰の高さくらいに持っていってみせた。

「それを見た時に、思わずポケットからデジカメを取り出して、一心不乱にその光景を撮っていたんだ。幾度フラッシュをたかれようと、彼らはまったく動じなかったよ。自分でも興味本位でそうしてしまったようで、なんとなく心苦しかったけれど、俺は夢中で撮り続けた。途中でカメラまで奪われそうになったから、がむしゃらに走って退却したんだけど、帰りの飛行機の中で、さっき撮った画像を見た瞬間、背筋がぞっとしたんだ。群がる人々の、いっぱいに広げられた手のひらや、必死な形相。でもその瞳はみんな、全てを諦めてしまったようにも思えて、言いようのない悲哀な写真だった。君も彼らのことを可哀想だと思うかい?」

「うん、すごく思う。」

色々言いようがあっただろうに、そうとしか言えなかった。

現が撮ったものを、まだ見たことはなかったけれど、こういう真っ直ぐな人が、何かを動かすことができるんじゃないかと思う。
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