ネトに続く現の旅
現は、仕事で月に二度ほど、色々なところにカメラを持って出かけた。その行き先は本当に様々で、タイだったり、沖縄だったり、モロッコだったり、かと思ったら、電車で二十分くらいのところだったりした。
その度に、いつも木彫りの変な人形だとか、よくわからない葉のしおりだとか、綺麗な砂だとかをお土産にくれた。
あまりにも現の口から出る国や都市の名前がめちゃくちゃなので、“本当はどこに行っていないのかもしれないわ”と、怪しんだりもしたけれど、もしそうだったとしても、それでもいいかと思った。

現が、本当は空港のお土産屋に入り浸っていたとしても、ある日コーヒーを飲みながら、「はい、全部嘘でした~」と両手を広げて言われたとしても、私はたぶんその状況ですら楽しいと思える。

そう、この時の私は、現といることが楽しくてたまらなかったのだ。
それでも、毎回持ち帰ってくる山のようなフィルムを、決して私には見せてくれなかった。

まだ私が、それを見せてもらえる距離まで近づけていないのか。それとも自分が足を踏み入れている現状の生々しさを見せたくないのか。
なんとなくだけど、後者のような気がした。
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