ネトに続く現の旅
「…できない。できてもせいぜい二つか三つ年をとった、今とそうは変わらない二人の姿だけ。でもだからこそ、好きだって口に出してしまうのがこわいの。現の中核に近づく度に、どんどんそういう気持ちが増していくことも。」

珠子は、「ふーん」とだけ言って頷いていたけれど、その表情はどこか嬉しそうだった。

でも本当はその時、私はもう既に、少しでも現の瞳に映っていたくて、現の世界を暴きたくて、傍にいたくてしょうがなかった。



夏の一日は長いといっても、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。

「またね」と呟いて、小さくなっていく珠子の車を見送ってから、その足で私は、愛読している雑誌を買いに、近所のコンビニに出かけた。

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