ネトに続く現の旅
店の自動ドアが開くと、ひんやりとした冷気と一緒に、香ばしい唐揚げの匂いが飛び込んできた。

私は入ってすぐ左側にある雑誌のコーナーに真っ先に向かった。
そして、お目当ての雑誌を確保すると、今度はとなりの男性誌のコーナーに移動した。
立ち読みをしている若い男性が疎ましそうにしていたけれど、お構いなしに私は色々な雑誌を物色していた。
今では、なかなか本屋にもゆっくり行く時間がないので、目の前の全ての本が物凄く面白そうに見えてしまうのだ。


様々な芸能人が表紙を構えている本たちの中から、私は一冊の週刊誌を手に取った。
アイドルの水着姿や、政治家の裏事情などの記事にざっと目を通して、男くさいタッチの漫画をぱらぱらと飛ばしながら捲った。
すると、見開きの最後のページの白黒写真の隅に、小さな現の名前を見つけた。

私は、“本当に写真を撮りに行ってなんだわ”と、安堵しながらも、初めて見る現の写真に、胸の高鳴りを抑えきれずにいた。

私はしばらくの間、そのページを瞬きもせずにじっと見つめながら、彼が伝えたいもの、そしてそれに夢中になってしまっている理由を痛感していた。
そして同時に、いつか現はこの仕事に飲み込まれてしまうんじゃないのだろうかと、少しだけ怖くなった。
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