ネトに続く現の旅
一度だけ、現が私の家の前までバイクで迎えに来てくれたことがある。

普通に考えても、結婚している者にそんなことをしたら、きっとたちまち近所で噂になってしまうだろう。
でも可笑しいことに、私はそこまで気が回らなかった。
現が電話の向こうで、「バイクで迎えに行こうか?」と言ってくれたので、私は勢いよく、「うん、お願い!」と返事をした。

真夏の日が照りつける、からっと晴れた午後だった。
私は、初めて乗るバイクの後部座席が嬉しくて楽しくて、現の腰に手を回して、“現、どうか今のこの姿を写真に収めて”と願っていた。

初めのうちは、スピードが落ちる度に、現のメットに自分のメットをぶつけてしまったり、曲がり角で振り落とされそうになっていた私だったけれど、慣れてくると、カーブに差し掛かる時は、少し体の重心を後ろにしてバランスを取ったりと、段々とコツが掴めてきた。
バイクの細かい振動も、背中からうなじへと吹き抜けていく風も、ごーごーと耳の中を唸る音も、初めて感じるものばかりで気持ちがよかった。

バイクの後ろにばかり乗りたがるという人の気持ちが、少しだけ分かった気がした。
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