ネトに続く現の旅
昔、バイト先にいた三歳年上の茜ちゃんが、よくそんな話をしていた。

茜ちゃんは、ちっちゃくって細っこくって、いつも髪の毛を明るい色に染めていた。
同じ色を入れても、すぐに赤みが強く出てしまう私とは違って、茜ちゃんの髪はいつもなんとも言えない綺麗な色に染まり、どんなに明るくしようとも、決して下品にならないから不思議だった。

バイクに乗りたいなら、自分で免許を取ればいいじゃないと、私は茜ちゃんに言った。
彼女は自分でもそう思って、中型免許を取りに教習所へ通ったらしい。
そして、可愛いアメリカンのバイクをローンで購入した。
ところが、いざ乗ってみると、どうもあのバイクの後ろにまたがった時の、興奮や感動を得られなかったというのだ。

「不思議だけど、それが全然違うのよ」と、茜ちゃんは真剣な顔で言った。

確かに、現のお腹や肩に掴まっている時のなんとも言えない安堵感や、二人がまるごと温かい膜に覆われているような感じだとか、現の後ろ姿も含めて、目の前に広がる空気や景色に、体ごと突っ込んでいくような一体感は、決して一人では感じることはできない。
あの時は、茜ちゃんの言っていることがよくわからなかったけれど、茜ちゃんもきっと、好きな男の人の後ろに乗っていた時に、そういう気持ちになったのだと思う。

そして、気持ちがいいだとか、スピード感がたまらないとかいうことの他に、別のものが自分の中に備わっているのも感じた。
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