ネトに続く現の旅
あらら。
あんなに楽しかったはずなのに、どうして切ない文になってしまったのだろう。

確かに、さっきのあの瞬間にはもう戻れることはないけれど、これから先にも同じように、もっともっと楽しいと思えたり、感動したり、目に焼き付けたいと思うことがたくさん待っているかもしれないのに。


不思議なことに、現といると、その先に待ち受けているはずの物があまりよく見えない。
それは決して二人に別れが近いとか、絶対的に交わることのない関係なのだとか、そういう絶望的なものではないけれど、でも何度二人のこれからを思い描いてみても、なぜかその構図がぼやけてしまうのだ。
そのことが、いつも私を悲しくさせた。

けれどそれは、現が普通の人よりも、今を一生懸命生きているからだという結論に達した。

現は本当によく動く。仕事で色々なところを飛び回るのもそうだけど、興味があるものには、いつだって驚くほど俊敏だった。
買い物に行っても、決して妥協はせずに閃くものが見つかるまで吟味するし、目当ての物があれば、目的地に向かってひたすら自分の足で歩く。
食べ物だって、いつも大きな口で、お腹がいっぱいになるまで本当に美味しそうに食べていた。
その様子があんまりにも気持ち良いので、もしも見えない先にどんなことが待ち受けていようとも、私は決して後悔はしないだろう。

最終的にはいつもそう思うのだ。
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