ネトに続く現の旅
街の街路樹も、段々と葉を落として物悲しくなってきた十月の終わりに、現はひとりっ子対策の情報収集という名目で、子供たちの写真を撮りに、中国へと旅立っていった。

私の方はというと、現を空港まで見送ったついでに、新宿の伊勢丹や高島屋に寄り込んで、気の済むまで買い物をしてきた。
そして、たくさんの荷物を抱えて家に戻ると、今夜はバイトも休みだったので、ゆっくりと時間をかけて夕食を作った。
今夜は少し肌寒かったので、葱をたくさん入れた煮込みうどんて、お浸しと、具沢山の茶碗蒸しを拵えてみんなで食べた。
養母はまだひとりで食事ができないので、うどんを専用の鋏で小さく切って口に運んであげる。
スプーンを近づける度に少しだけ上がる、養母の左の唇に嬉しさを感じた。

二人が眠るのを見届けると、私は久しぶりに夜更かしをしようと意気込んでいた。
居間の電気を消したままテレビだけをつけて、カーペットに寝転んだ。
寝室からひっぱりだしてきた毛布を腰から下に掛けると、テレビはつけてはいるくせに、その音だけを消して、チカチカと白い不規則な灯りの中で漫画を読んでいた。
夜更けに近づけば近づくほど、意味の無いことをしたくなるものなのだ。

テレビのぼんやりとした明るさが、まるで異次元のもののようで落ち着いた。
それは、真冬の夜中に見上げる星空に少し似ていた。

光の粒には癒やしの効果があるのかしら?
そんなことを考えていたら、カーペットに片方の頬を押し付けて、いつしかうとうとしてしまっていた。

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