ネトに続く現の旅
「そんなところで寝ていると風邪をひくぞ。」

聞き覚えのある柔らかい声で目が覚めた。
目を開けると、廊下に続くドアからひょっこりと顔を覗かせている養父の姿が、おかしな向きに見えた。養父は、静かにドアを閉めて居間の電気をつけると、杖をついてゆっくりとソファに腰を掛けた。
私は、しばらくその体勢のまま寝転んでいたけれど、喉が乾いたので、もそもそと体を起こした。
そして、まだぼんやりとした頭で立ち上がり、台所へと向かった。
なかなか上手に瞼が開かなかった。

「お養父さんもお茶飲む?」

「うん、少し熱いのがいいな。」

「了解。」

私は、食器棚から養父の湯のみ茶碗と私のマグカップを取り出すと、ガス台の上の黄色いやかんに水を入れて火にかけた。


< 36 / 69 >

この作品をシェア

pagetop