ネトに続く現の旅
中でも一番盛り上がったのは、養父と養母の出会いの話で、養父はいつも自分からその話を振り出すくせに、いざ養母が話し始めると、いつも決まって耳を赤くして照れていた。
私は、いつもは真面目で凛としている養父の口から出てくる、こういった類の話がたまらなく好きだった。


「その相手っていうのはな、世界中どこを探しても一人きりしかいない。だけどな、その相手とは天と地がひっくり返っても一緒にはなれないんだ。どうしてかって?そいつはな、人生の張りだよ張り。そういうものが無いと人間はつまらないだろう。だから、神様がわざと、一緒にはなれないように、でもずっと繋がっていけるようにと小細工をしたんだよ。もどかしい想いな切ない想いをスパイスとしてな。」

私は、養父が語るロマンチックな物語に耳を傾けながら、湯気の昇るカップを両手に持って、現のことを思い浮かべていた。

私と現もそうなのだろうか。
一生結ばれることは無いとわかっていたとしても、それでもずっと関係が切れずに繋がっていられるなら、ひょっとしたらその方が幸せなのかもしれない。
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