ネトに続く現の旅
実は中国に行っているなんて嘘で、本当は今頃、ピカピカに磨いたビッグスクーターの後ろに女の子を乗せて、夜の街を飛び回っているのかもしれない。
でもそんなこと、あの犬のような真っ直ぐな現の瞳を見ていたら、考えられるはずもなかった。
けれど、そんな現の姿を想像している瞬間だけは、いつも嘘をついている自分への負い目が消えるような錯覚に陥っていた。
私はずるい。

きっと先の見えない恋ほど、甘美なものはないのだろう。
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