ネトに続く現の旅
爽やかな笑顔だった。

私は、その男の大きな口元から、不思議なエネルギーのようなものを感じた。
それは、私が今まで出会った人たちの中でも、ほんの数人からしか感じたことはないものだった。
生きていくことに対する妥協や迷いなど考えもしない、何か自分にとっての揺るぎない物を見つけている人が放つエネルギー。
こういう人とは、一緒にいると自分自身も物凄いエネルギーを使うけれど、その分いろんな刺激を受けるのだ。良い意味でも。悪い意味でも。

その男の言動は、テレビドラマを見ていても、主人公の表情や会話の内容よりも、後ろの歩道橋に書かれた文字なんかが気になってしまう私にとっては、自分の隠し持つ面白おかしい部分を擽られたようで、ツボにはまった。

この人は食に対する考え方が人より深いのか、それとも全てのことにおいて探求心を備えもっているのだろうか。
ぶつぶつと何かを言いながら、未だもって注文が決まらない様子の男を眺めながら、その時の私は、ぼんやりとそんなことを思っていた。
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