ネトに続く現の旅
そのせいか、現と会っている間中、現が私に言ってほしいと思っている言葉も、してほしいと思っている表情も、全部わかっているのに、いつも素直にそれをしてあげることができなかった。
もっと抱きしめてあげればよかった。
もっともっと優しくしてあげればよかった。
いつだって後悔するのは家に着いてからだった。
キスをしたからといって、そんな想いが綺麗さっぱり消えてしまったわけではないけれど、軽くなったのは事実だ。



『結婚しているなんて嘘よ。』

重くならないようにさらっと言えばいいじゃない。
どうして言えないの?どうして言わないの?

真っ直ぐな現に、嘘をついてしまったことがうしろめたいから?
本当は義両親のことを恥ずかしいと思っているから?

違う違う。どれもぴんとこない。

でも言えない。簡単なことなのに、本当のことを言ってしまった方が絶対に楽なのに、
現のことを心から大切に思っているのに、どうしても言えない。
言えない理由がわからない。

いつもこんな風に自問自答している気がする。


私は、現の気持ちがこれからも変わらないでいてほしいと願っているのか。
それとも、本当は現の気持ちが冷めていってしまうのを待っているのか。
本当によくわからないでいた。
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