ネトに続く現の旅
「どうしてむっちゃんのことを撮った写真は、見てると切なくなってくるんだろう。」

現は、私を写した写真をまじまじと見つめながら、不思議そうに呟いた。

「それは良い写真っていうこと?愛のチカラじゃない?」

私がおどけてそう言うと、現は「ばーか」と笑い飛ばしてから、手に持った写真をもう一度じっくりと見つめていた。

その視線は、四角い枠に収まった笑顔の私が、思わず目を背けてしまうほどに、現場でシャッターを切る時のような、鬼気迫る真剣なものだった。
ぎゅっと結んだ唇から顎にかけてのラインが、つるんとしていて愛しかった。

現はわかっていたのだと思う。

私は結婚などしていない。でもあなたとずっと一緒にいることはどうしてもできないのよ。
ごめんね。でも好きよ、物凄く好きよ。
そういう声にならない私の言葉を、現は私の写真から読み取っていたのだと思う。
そんな気がした。

私は何も言わなかった。現も何も言いはしなかった。

そういえば、初めのうちは、現に写真を撮ってもらうのが苦手だったっけ。

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