ネトに続く現の旅
「なぁにそれ。」

私が思わずぷっと吹き出すと、現は、

「向こうで毎日これを着ていれば、俺が死んじゃったとしても、一番にむっちゃんに連絡がいくよ。」

と言って笑った。

どうして現はいつも大事なことを言う時に笑うの?余計悲しくなるよ。

いつもひたすらに前を向いている現の口から、「死」という言葉が余りにも自然に出てきたことに、私は動揺した。あまりにも現に似あわない言葉だったから。

それでも、同時に私は嬉しくて泣きそうになってしまった。
そんな物が、遠い異国の地で役に立つのかなんて、本当はたいして期待もしていなかったけれど、現に選び抜かれたレモンイエローのTシャツだけが、私と現とを繋ぐ唯一の連絡網だった。
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