ネトに続く現の旅
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蒸し暑い八月の午前中、公園の噴水でマイナスイオンでも浴びようかと現が言うので、私たちはお揃いのビーチサンダルを履いて、散歩がてらに公園まで続くじりじりと暑い道路の上を歩いていた。
ぺたぺたと二人の足が面白い音をたてていた。

「ハナちゃーん」

ふいに現が、数十メートル前を歩く、犬の散歩をしている少し背中の曲がった女性に向かってそう叫んだ。

そのハナちゃんと呼ばれる女性は、ゆっくりと振り向くと、私たちに向けてぶっきらぼうに片手をあげた。
年は六十代くらいだろうか。
この暑いのに、なぜか毛糸の手袋をしていて、頭には、黒やらピンクやら黄緑やらの入った、変わった配色の、これまた毛糸の帽子を被っていた。

ハナちゃんの両手から伸びるリードの先には、トイプードルと、シーズーと、頭に赤いリボンをつけているヨークシャテリアが二匹と、つけていないのが一匹、いかにも暑そうに舌を出しながら、温められたアスファルトに乾いた爪の音を響かせて歩いていた。


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