ネトに続く現の旅
きっと現は、今この時でも、遥か彼方の異国の地では、地面に倒れていく子供たちや、けたたましい銃撃の音に耳を塞ぐ人々がいるのだという事実を思い浮かべているのだろう。ここからは決して見えないはずの海の向こうを見つめるように、哀しい瞳をしてぽつりとそう言った。

「ちがうの。それはきっと現といるからだよ。今、私が一人でハナちゃんに会っても、こんなこと考えもしないよ。こんな美味しい飴ももらえなかったよ。現といるからなんだよ。現がすごいんだよ。」

そう言いたかったのに、嗚咽で言葉にならなかった。気がつくと私は、現のおなかに頭をくっつけて号泣していた。
せっかくハナちゃんに貰った飴玉が、涙と混ざってしょっぱくなってしまった。
それでも、滝のように流れる涙と鼻水を、自分の力で止めることが出来なかった。

現はポケットからハンカチを取り出すと、それで私の顔を丁寧に拭いた。
目や、頬や、唇や、ひとつひとつのパーツに時間をかけて、本当に丁寧に。

いい香りのする現のハンカチと表情とを交互に見ていたら、また目の端から涙が溢れてきてしまった。

現、お願い、そんなに愛おしそうな目で私を見ないで。
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