ネトに続く現の旅
出す宛ての無い手紙を綴りながら、ちょっとセンチな気分に浸っていた。
ゆっくりとこたつからでると、カーテンと雨戸を開けた。
まだ外は真っ暗だった。



毎朝私は、どんなに前の日のバイトが遅くなろうとも、夜明け前に一度目が覚める。

寝息をたてる義両親の姿を確認してから、ある時はゴミ置き場までゴミを出すためにだったり、またある時は、坂の下にある自動販売機までコーヒーを買いに行くためだったりに、家の前からつづく緩やかで長い坂道を、ゆっくりゆっくり下っていった。

薄い水色のカーディガンを肩にかけて、養母のサンダルを借りて、まだ肌寒い朝もやの中を、一歩一歩踏みしめるようにして歩いていた。

右側にはぽつぽつと灯りのともるたくさんの住宅。
左側も、これから住宅地になるのだろうか。でこぼことした更地が広がっていて、所々に残された木が、複雑な影絵のようにくっきりしたシルエットを残していた。

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