ネトに続く現の旅
その上には、今日という日が始まろうとしているピンク色の空と、まだ光輝く星たちとが、不思議たなバランスを保って鮮やかに広がっていた。

ピンクからオレンジに、オレンジから白、そして白から水色。
空や太陽や大地が創り出す、純度百パーセントのグラデーションは、この世のものとは思えないほど美しかった。

現にも見せたいと思った。
出来ることなら、現のとなりでこの美しい景色を見たかった。

現のことを思い浮かべる瞬間は、未だに胸が痛む。
今や私は、現のあの低い声や、どこまでも真っ直ぐな瞳や、犬のような無邪気な表情を、あまりにも鮮明に目の前に作り出すことが出来るようになってしまっていたので、そのリアルな現の残像が現れると、つい注射針を刺される瞬間に、痛みに耐える時のような顔になってしまうのだ。
それでも、哀しい出来事が起きた時に現を思い出すんじゃなくて、こういう瞬間に思い出せることを、心底幸せだと思った。
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