ネトに続く現の旅
養母が倒れた後、寝たきりになってしまった二人は、声を揃えて老人病院に入るよと私に告げた。

老後の蓄えとでもいうのだろうか、二人にはびっくりするほどの貯金があったし、金銭的なことではそんなに問題はなかったけれど、私には抵抗があった。
せっかく培ってきた親子の関係に、壁を隔ててしまうようでどうしようもなく悲しかったのだ。
二人は私のことを想ってそう言ってくれたのだろうけど、私のためを想ってくれているなら、それこそ面倒を看させて欲しかった。
私はあなた達の娘だよ。ずっと一緒に暮らしたいよ。三人でわぁわぁ声をあげて泣いたあの夜、二人のことは何があっても最後まで私が看るんだと心に決めた。

十代の頃は、多少のやんちゃをして、二人の手を煩わせてしまったこともあったけれど、本当の両親のことなど思い出す間もないほど、彼らは私を可愛がってくれた。
人並みにおしゃれも遊びも経験したし、何度か恋だってした。
この年で、もう思い残すことはないっていうのも、おかしな話だけれど、これまで養父と養母にもらった愛情分を思えは、なんでもないことだと思えたのだ。

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