身長差43センチのふたり。



「ただいまー。」


お母さんが好きなケーキ屋さんのケーキを右手にぶら下げて、私は住んで2年目になる家に帰宅した。


『あ、おかえりー、雛乃。今日は早かったな。』

「お兄ちゃん!」


ダイニングから顔を出したのは、都内の某有名大学に通っている私の5つ上の兄。

玄関に入った瞬間に鼻孔を燻ったお肉が焼けた食欲をそそる匂いは、お兄ちゃんが夕飯を作っていたからだと察する。


「お兄ちゃんだって、早いやん。今日は講義なかったと?」

『うん、今日は午前だけやったけんな。』


そっかー、と言いつつ靴を脱いだ私は、廊下を歩いてお兄ちゃんの元に駆け寄った。


「ケーキ買ってきたよ。冷蔵庫入れとってー」

『自分でしぃよ。…ま、いいけど。』

「ありがと。」


私の手から受け取ったケーキを、お兄ちゃんは何だかんだ言いつつも冷蔵庫に入れてくれる。

昔から、私にとても甘いお兄ちゃんは、私の自慢。

頭良いし、優しいし、……何でか知らないけど背も高いし。

お兄ちゃんの身長は175センチもあって、家族代々受け継がれていた低身長の遺伝を、お兄ちゃんだけは受け継がなかったようだ。

私もお母さんもおばあちゃんも、皆150センチ前後なのに。

……とくに私はその遺伝を強く受け継いでいる。



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