身長差43センチのふたり。
『……小日向、大丈夫?』
「ぅ、うん…っ、何とか…。」
四方八方をサラリーマンに塞がれて息苦しさに耐えていると、斜め前に立っている高遠くんが気にしてくれた。
背も低いし、人もぎゅうぎゅうに詰まっているから、容赦なくサラリーマンたちのスーツと密着する。
まだ痴漢なんてされたことないけど…、この時間がすごく怖い。
ちょっとでもこの密着状況から逃れようと少しだけ高遠くんの方に寄ってみるけど、あまり状況は変わらない。
『――小日向。』
「っ……?」
停車駅に電車が止まって人が減った瞬間に、私は高遠くんに手を掴まれ、ドア近くの壁に連れてこられた。
壁に背中を向けて立つ私の前に、高遠くんが周りから守ってくれるように立ってくれてる。
私が押しつぶされないように、わざわざ連れてきてくれたんだ…。と、高遠くんのさりげない優しさに口元が緩んでいく。
「…ありがと。」
『いーえ。…福岡はこんなことあまりない?』
「うん。通勤ラッシュで混むけど、こんなには混まないよ。」
『あ、そうなんだ?』
ゆとりのあるスペースを高遠くんが作ってくれたおかげで、降車駅に着くまでいつも感じていたストレスを感じすに過ごすことができた。