身長差43センチのふたり。
「カバン、置いてくるー。」
『おう。雛乃、まだ夕飯出来てないけん、手伝って。』
「分かったー。」
お兄ちゃんの言葉を背中で受けつつ、私は自分の部屋に向かった。
中に入って、カバンを勉強机に置いていると、目に入った写真立て。
そこに収まっているのは、3年前、生まれ育った福岡の地元の友達と最後のお別れの時に撮った写真。
皆、元気にしてるかなー…と思いながらも、脳裏に浮かぶある人物の顔が浮かんで心がチクリと痛むのを感じた私は、それを振り切るように用意していたお母さんへの誕生日プレゼントを持って部屋を出た。
「お兄ちゃん、何すればいいとー?」
家族で話す時には抜けない博多弁。
上京してきて半年間は、標準語と博多弁の使い分けが難しくてあまり人前では話したくなかったけど、一年ちょっとも経てば、それにも慣れてしまった。
『あ、ハンバーグが焦げんか見とってくれん?』
「はーい。」
ダイニングでテーブルにお皿を並べているお兄ちゃんに言われた通り、一度ハンバーグを焼いているフライパンの蓋を開けてみる。
ジューッというお肉が焼ける音が耳に、お肉の匂いが鼻に届いて、ますます空腹度が増していく。
早く出来ないかなー、お母さんまだかなー、と思っていると、玄関の扉が開閉する音が聞こえた。
『えっ、もう帰ってきたん!?まだ準備終わってないっちゃけど!』
驚くお兄ちゃんをよそに、私は玄関にいるはずのお母さんの元に駆け寄った。
「おかえり!…誕生日おめでとう、お母さんっ」
こうして、ちょっとばかり早い誕生日パーティーが始まったのだった。