身長差43センチのふたり。
――「千尋くんっ!」
マンションのエントランス前。
ガラス張りのマンションの入り口のドア付近に、こちらに背を向けて立っている千尋くんに駆け寄った。
『…おはよ。』
「おはよ…っ!」
会った瞬間に舞い降りた千尋くんの爽やかな笑顔。
こんなにもドキドキしてしまうのは、ここまで走ってきたからか、それともこの千尋くんの笑顔に速くもやられているのか。
――考えるまでもなく、後者だけど。
「ゴメンねっ、待ったやろ?」
『そんなに待ってないから、気にすんなよ。それに、雛乃を待ってるのって、案外苦じゃないしな。』
「っ……そ、そう…?」
あぁ、と頷いて、照れる私を満足そうに見下ろす千尋くんに、またドキドキしちゃう。
会って1分も経っていないのに、こんなに忙しなくドキドキさせられちゃって、本当に私は今日一日、千尋くんとのデートを乗り越えられるのかどうか、ちょっと不安になった。
『じゃあ、行こっか?――はい。』
「えっ…?」
終始笑顔の千尋くんから、当然のように差し出された左手。
その左手を前にして首を傾げる私に、鈍いなぁと一言呟いた千尋くんは、その大きな左手で私の右手を掴んだ。
『――恋人繋ぎ。』
「っ――!///」
絡まった手と手。
冷たかったはずの右手が、急速に熱を上昇させるのを全身で感じた。
私の歩幅に合わせて歩いてくれる千尋くんの隣で、私は嬉しさのあまり笑顔をこぼさずにはいられなかった。