身長差43センチのふたり。



――「千尋くんっ!」


マンションのエントランス前。

ガラス張りのマンションの入り口のドア付近に、こちらに背を向けて立っている千尋くんに駆け寄った。


『…おはよ。』

「おはよ…っ!」


会った瞬間に舞い降りた千尋くんの爽やかな笑顔。

こんなにもドキドキしてしまうのは、ここまで走ってきたからか、それともこの千尋くんの笑顔に速くもやられているのか。

――考えるまでもなく、後者だけど。


「ゴメンねっ、待ったやろ?」

『そんなに待ってないから、気にすんなよ。それに、雛乃を待ってるのって、案外苦じゃないしな。』

「っ……そ、そう…?」


あぁ、と頷いて、照れる私を満足そうに見下ろす千尋くんに、またドキドキしちゃう。

会って1分も経っていないのに、こんなに忙しなくドキドキさせられちゃって、本当に私は今日一日、千尋くんとのデートを乗り越えられるのかどうか、ちょっと不安になった。


『じゃあ、行こっか?――はい。』

「えっ…?」


終始笑顔の千尋くんから、当然のように差し出された左手。

その左手を前にして首を傾げる私に、鈍いなぁと一言呟いた千尋くんは、その大きな左手で私の右手を掴んだ。


『――恋人繋ぎ。』

「っ――!///」


絡まった手と手。

冷たかったはずの右手が、急速に熱を上昇させるのを全身で感じた。

私の歩幅に合わせて歩いてくれる千尋くんの隣で、私は嬉しさのあまり笑顔をこぼさずにはいられなかった。



< 186 / 384 >

この作品をシェア

pagetop