身長差43センチのふたり。
『へぇー。そんなこと言ってもいいのー?』
「?」
俺たちの反応に機嫌を損ねたらしい柴戸は、ブラックなスマイルで意味深発言を飛ばした。
柴戸の纏うオーラがどす黒く見えるのは俺だけか?
『何だよ、もったいぶって…?』
『フフンッ、その映画を見たいって言ってる張本人は雛乃なんだけど。』
「っ!?」
『そう来たか…。』
柴戸の話を聞いて、固まる俺と納得したように頭を抱える久松。
「…もしかして、明日…小日向も来んの…?」
『そうよ。』
「!」
恐る恐る気になったことを聞いてみると、あっさりと肯定した柴戸に、俺は驚きを隠せない。
『どうする?映画、行かない?』
返事を聞かずとも分かることを、わざわざ聞いてくる柴戸は、まさに小悪魔。
恐ろしい女だ。
「……行く。」
『よしっ、来た!――宏太は?』
俺の返事に満足気の柴戸は、その小悪魔スマイルで久松を見つめる。
『行けばいいんだろ。』
『はいっ、けってーい♪じゃ、色々決めたら連絡するから!』
久松の返事を聞いてすぐにそう言ってこの場から去っていった柴戸はまさに嵐。
嵐が去った後は、恐ろしいほどシーンとしていた。
「…久松、すまん。」
『いや、俺も…すまん。』
俺の恋事情のために一日を犠牲にする羽目になってしまった久松への申し訳なさだけが、その場に残ったのだった。