身長差43センチのふたり。
『雛乃…っ?』
いきなり抱き着いてしまったからか、千尋くんは戸惑いを隠せない様子。
それでも、私は千尋くんに絡めた腕を離さない。
千尋くんの大きな背中に頬をくっつけて、瞳を閉じた。
普段の私だったら自分から千尋くんに触れるような大胆なことは恥ずかしくてできないんだけど、病み上がりな今の私は千尋くんと触れ合っていたいと思う衝動を抑えられなかった。
これまでの寂しさを取り戻すかのように千尋くんを求める。
「千尋くんは…あったかいね。」
『……っ』
広い背中から伝わる千尋くんの体温に心が安らいでいく。
ドキドキと忙しない私の心音はきっと千尋くんにバレバレなんだろうけど、そんなことはどうでもよかった。
今はただ…大好きな人を抱きしめたくて。
これは夢じゃないと感じたくて。
つい数時間前までの荒んでた自分がウソのように思えてくる。
それもこれも…、千尋くんが私を追いかけてきてくれたからだね。
それからずっと黙ったまま、私たちはそのままに静かで穏やかで温かな時間を過ごした。