身長差43センチのふたり。



――翌日。


あの高身長の男性の後姿を見たことがあるのは私だけでしょうか。


華ちゃんと約束した映画鑑賞当日。

私は待ち合わせ場所である映画館がある地区の駅前まで電車に揺られてやってきた。

集合時間は11時。ただ今の時刻、10時40分。


電車を降りて目に入った後姿に、私は冷汗がぶわっと吹き出るのを抑えられなかった。

…だって。だって、見間違うはずない。

ここ毎日は見つめていたのだから、間違えるはずのない高遠くんの後姿。

顔を見なくても、紺のパーカーにデニムという私服しようだとしても、分かってしまうのだ。


高遠くんだろう男性の視界に入らないように、一定の距離を保って後ろを歩く。

改札を通って、駅前の時計台に向かう彼と私の進行方向は同じ。

時計台の横で立ち止まった彼が振り返った瞬間、私の推測は確信に変わる。


……やっぱり、高遠くんじゃん。

集合時間20分前。

何度か遊んだことのある華ちゃんが、集合時間ギリギリにしか待ち合わせ場所に来ないことは分かりきっていた。

もう駅から出てしまったし、隠れる場所なんてない。


高遠恐怖症を克服するためのミッションは、待ち合わせ直前から始まっていた。



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