身長差43センチのふたり。
『ほら、言ったよ。雛乃も。』
「っ、…仕方なかけん、博多弁で喋っちゃるわ。」
最終的に折れたのは私。
千尋の博多弁にノックアウトされた私は、されるがままに千尋に抱きしめられた。
あぁ…幸せすぎて溶けそう…。
千尋の何もかもに骨抜きにされている私は、もう千尋がいなければ生きていけないだろう。
『あー、可愛い。連れて帰りたいくらい。』
「っ、それはダメやき…っ!」
『知ってた?ダメって言われたほうが燃えんの。』
「っっ」
甘すぎる君に降参です。
千尋くんの背中に腕を絡めながら、私が抵抗もなく千尋に博多弁で話すようになるのはそう遠くないのかもしれないと思った。
千尋には、色々な博多弁を覚えてもらおうかなーなんていう画策もして。
『あ、そういえば雛乃、』
「ん?」
『元カレのアドレスはきちんと消そうな?』
「っ、あ…っ」
そうだ、私、和樹のアドレス消してない…!
マンションの角で曲がった時鳴り響いた着信音は和樹からの電話を告げるもので。
固まった私の反応を見て、勘のいい千尋はあれが和樹だと分かったんだろう。
「あれはただ、消し忘れてただけやけんっ…!」
『分かってるって。雛乃は俺だけだもんな?』
「ッ、うん――っ」
火を噴くくらいに真っ赤になる私の携帯電話を取り出した千尋は、ちゃっかり自分の手で和樹のアドレスを消したのだった。