身長差43センチのふたり。
華ちゃんの久松くんに対する態度は、とても冷たいようで温かい。
いつもツンツンしてる華ちゃんだけど、久松くんにだけ見せるふとした瞬間のデレには、可愛いという言葉がぴったりだ。
…あれだよね。好きな人にはなぜか冷たくしちゃうっていう、アレ。
「恋する乙女だね、華ちゃん。」
『ちょっ、恥ずかしいからヤメテ!!』
ちょっと言ってみただけなのに、それを真に受けて顔を真っ赤にして声を荒げる華ちゃんは、本当に可愛いと思う。
もしかして、私の高遠恐怖症を治すという名目で、本当は久松くんとの映画館デートが華ちゃんの目的だったんじゃ…恐るべし、恋する乙女。
ま、華ちゃんだからそんなことも許せちゃうけど。
絶対絶対、宏太だけにはこのこと言わないでよねっ!!と必死に私に捲し立てる華ちゃんを落ち着かせるように、分かったよ、と了承の意を口に出した時、タイミングを見計らったかのように4人分のドリンクを持った2人が帰ってきた。
『はい、オレンジジュース。』
「ありがとう!」
『…!!』
高遠くんから差し出されたオレンジジュースが入ったグラスを受け取った私は、笑顔で高遠くんに感謝の意を述べた。
高遠くんへの苦手意識も克服したし、見たかった映画も楽しかったし、普段では見られない乙女で可愛い華ちゃんも見れたし、なんだか今日は良い日だ。
今日一日の充実感に嬉しくなってオレンジジュースを口にしていた私に、隣で高遠くんが耳を赤く染めていたことを知る由もなかった。