身長差43センチのふたり。



『何で割引券もらえたの?』


斜めの席と行っても距離が近いからか、小日向たちの会話が聞こえる。


『あー…、昨日ね、あんぱんを買おうと売店に行ったんだけど、売店の中が混んでて、一応並んでたんだけど、売店のおばちゃんに気づいてもらえなくてね。残一のあんぱんが取られちゃってさー。それに気づいたおばちゃんが、気遣ってくれてね、もらったんだー。』

『へぇー。』


俺の心の声と、柴戸の声が重なった。

身長が低いと大変なんだなー。俺は逆に、この大きさで勝手に大盛りにされることとかが多いけど。


『でも、今日はちゃんとあんぱん買えたから、そんなに気にしてないけどねー。』

『雛乃にとっては、よくあることだもんね。』

『まぁね。』


小日向は俺に対して背を向けてる状況で表情まではわからないが、柴戸が笑っているところを見る限り、小日向もあまり気にしてないようだった。

それより、小日向ってあんぱん好きなんだ…なんて、どうでもいいことを思っていると、俺の横に置かれた日替わり定食。


『わりぃ、遅くなって。』

「おー、遅い遅い。」

『ゴメンって言ってるだろ。…っつーか、まだ鳩村は落ち込んでんのかよ。』


久松が帰ってきて、目の前の鳩村に目線を向けると、口から魂が抜けている鳩村がいた。


「……放っておけよ。」

『……そうだな。』


満場一致で、俺と久松は鳩村の介抱を放棄して昼飯を食べ始めたのだった。



< 8 / 384 >

この作品をシェア

pagetop