身長差43センチのふたり。
『何で割引券もらえたの?』
斜めの席と行っても距離が近いからか、小日向たちの会話が聞こえる。
『あー…、昨日ね、あんぱんを買おうと売店に行ったんだけど、売店の中が混んでて、一応並んでたんだけど、売店のおばちゃんに気づいてもらえなくてね。残一のあんぱんが取られちゃってさー。それに気づいたおばちゃんが、気遣ってくれてね、もらったんだー。』
『へぇー。』
俺の心の声と、柴戸の声が重なった。
身長が低いと大変なんだなー。俺は逆に、この大きさで勝手に大盛りにされることとかが多いけど。
『でも、今日はちゃんとあんぱん買えたから、そんなに気にしてないけどねー。』
『雛乃にとっては、よくあることだもんね。』
『まぁね。』
小日向は俺に対して背を向けてる状況で表情まではわからないが、柴戸が笑っているところを見る限り、小日向もあまり気にしてないようだった。
それより、小日向ってあんぱん好きなんだ…なんて、どうでもいいことを思っていると、俺の横に置かれた日替わり定食。
『わりぃ、遅くなって。』
「おー、遅い遅い。」
『ゴメンって言ってるだろ。…っつーか、まだ鳩村は落ち込んでんのかよ。』
久松が帰ってきて、目の前の鳩村に目線を向けると、口から魂が抜けている鳩村がいた。
「……放っておけよ。」
『……そうだな。』
満場一致で、俺と久松は鳩村の介抱を放棄して昼飯を食べ始めたのだった。